リスキリング補助金・助成金まとめ|企業向けと個人向けの制度を整理【2026年版】
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社員のリスキリングに補助金や助成金を使いたいと考えたとき、最初につまずきやすいのが「どの制度が自社に当てはまるのか」という整理です。リスキリング向けの公的支援は、企業が申請する助成金と、個人が受け取る給付金などに分かれています。
中心になるのは、厚生労働省の人材開発支援助成金にある事業展開等リスキリング支援コースです。2026年8月には対象訓練の考え方が改正されたため、制度の違い、助成率、申請の流れを2026年10月時点の公式情報をもとに整理しました。

Atkid 代表
中澤 寛
Atkid株式会社の代表として、ホームページ制作・SEO対策・Web広告運用などのWebマーケティングを統括。2014年の創業以来、自社事業でも集客から成約まで仮説検証を重ね、現場で再現できる施策をクライアントへ提供しています。
ライター詳細目次
リスキリングの補助金・助成金は企業向けと個人向けで制度が分かれる
リスキリングの公的支援は、企業が社員に研修を受けさせる場合は厚生労働省の人材開発支援助成金、個人が自分で学ぶ場合は教育訓練給付などと、対象者によって使う制度が分かれます。「リスキリング補助金」という名前の単独の制度があるわけではなく、目的ごとに複数の制度が用意されています。
| 区分 | 主な制度 | 所管 | 申請する人 |
|---|---|---|---|
| 企業向け | 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース、人材育成支援コース、人への投資促進コースなど) | 厚生労働省 | 雇用保険適用事業所の事業主 |
| 個人向け | 教育訓練給付(専門実践・特定一般・一般) | 厚生労働省 | 要件を満たす在職者・離職者 |
| 個人向け | 教育訓練休暇給付金 | 厚生労働省 | 無給の教育訓練休暇を取る雇用保険の一般被保険者 |
| 個人向け(転職支援) | リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業 | 経済産業省 | 補助事業者(受講者は負担が軽減された価格で受講) |
会社として研修を実施するなら企業向け、社員が自分の意思で講座を選ぶなら個人向けの制度を確認するのが基本です。自社の研修計画がどちらに当たるかを先に決めておくと、調べる範囲を絞れます。
企業向けの中心は人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コース
企業のリスキリングに活用できる主な制度の一つが事業展開等リスキリング支援コースで、中小企業は経費助成75%、賃金助成1人1時間あたり1,000円、大企業は経費助成60%、賃金助成500円です。新規事業の立ち上げなどに伴い、新たな分野で必要となる知識・技能を習得させる訓練が対象になります。
厚生労働省の事業展開等リスキリング支援コースのご案内(令和8年8月3日版)では、このコースは令和4年度から令和8年度までの期間限定の助成金として案内されています。令和9年度以降も続くかどうかは、最新の案内で確認が必要です。
対象になる訓練の3つの類型
対象は、OFF-JTで行う原則として実訓練時間10時間以上の訓練で、次のいずれかに当てはまるものです。eラーニング・通信制は、実際の受講時間ではなく標準学習時間10時間以上または標準学習期間1か月以上で判定します。
- 事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識・技能を習得させる訓練
- 企業内のDX化やグリーン・カーボンニュートラル化を進める際、関連業務に必要な専門的な知識・技能を習得させる訓練
- 企業内の人事・人材育成に関する計画に基づき、今後従事する予定の職務に必要な専門的な知識・技能を習得させる訓練
単に既存のアプリやシステムを購入して操作方法を覚えるだけの訓練や、コンサルタントによる経営改善の指導など通常の事業活動として行うものは対象になりません。文章や数値の入力程度の初歩的なデジタル操作だけを学ぶ内容も対象外です。
助成率と1人あたりの限度額
経費助成には、実訓練時間数に応じた1人1訓練あたりの限度額があります。
| 実訓練時間数 | 中小企業 | 中小企業以外 |
|---|---|---|
| 10時間以上100時間未満 | 30万円 | 20万円 |
| 100時間以上200時間未満 | 40万円 | 25万円 |
| 200時間以上 | 50万円 | 30万円 |
eラーニングと通信制による訓練は、中小企業15万円、大企業10万円が限度額です。eラーニング、通信制、定額制サービスによる訓練は経費助成のみで、賃金助成は受けられません。
2026年8月3日の改正で変わった点
2026年8月3日以降に提出する計画届では、DX化・GX化に関する訓練でも、職務に間接的に必要な知識や、職種を問わず共通して必要な知識を学ぶ訓練は対象外になりました。
- 対象外の例は、DXの概念やデジタル技術の概要を学ぶ訓練、生成AIを使うための汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練など
- 対象の例は、生成AIを活用して商品提案書の構成案作成や文章生成を学ぶ営業担当者向けの訓練など、特定の業務に直結するもの
- 受講回数は同じ労働者につき、支給申請日を基準とする1年度にこのコース全体で3回まで。そのうちeラーニングによる訓練は1回まで(経過措置あり)
訓練内容に沿って対象労働者を選んでいるかも確認されます。経過措置もあるため、改正前に契約・申込をした訓練は厚生労働省の人材開発支援助成金のページで支給要領を確認してください。
中小企業向けの設備投資加算
2026年4月には、中小企業向けに設備投資加算が新設されました。訓練で実際に使う機器・設備と同種で事業展開に役立つ機器を新たに導入した場合、導入費用の50%が通常分とは別に加算されます。
限度額は1訓練1事業所あたり支給対象労働者1人につき15万円で、10人以上の場合は150万円です。賃金要件または資格等手当要件を満たすことなど、追加の条件があります。
人事・人材育成計画に基づく訓練で必要になる追加手続き
3つ目の類型である、人事・人材育成計画に基づく訓練を選ぶ場合は、ほかの類型より手続きが増えます。対象は訓練開始日から3年以内に従事する予定の職務で、訓練開始時点の職務とは異なる職務に必要な知識・技能であることが条件です。
- 中小企業は、計画届などを認定経営革新等支援機関に提出し、事前に計画内容の確認を受ける
- 受講予定の社員に計画の内容と受講目的を説明し、業務命令で受講することへの承諾書を取得する
- 訓練終了後、予定していた職務に就かせたうえで、計画の実施状況報告書を労働局へ提出する
合理的な理由なく予定した職務に就かせなかった場合や、予定した職務への変更前後で合理的な理由なく賃金や手当が引き下げられた場合は、不支給や支給決定の取消しになります。
事業展開以外の研修なら人材育成支援コースなども選択肢になる
新規事業やDX化に当たらない職務関連の研修でも、人材開発支援助成金の人材育成支援コースや人への投資促進コースを使える場合があります。研修の目的と形式によって、当てはまるコースが変わります。
| コース・訓練 | 主な対象 | 経費助成率(中小企業) |
|---|---|---|
| 人材育成支援コース(人材育成訓練) | 職務に関連した10時間以上のOFF-JT | 45%(賃金要件等を満たすと60%) |
| 人への投資促進コース(高度デジタル人材訓練) | ITスキル標準・DX推進スキル標準のレベル3・4に当たる訓練など | 75% |
| 人への投資促進コース(定額制訓練) | サブスクリプション型の研修サービス | 60%(賃金要件等を満たすと75%) |
人への投資促進コースも、令和4年度から令和8年度までの期間限定の助成と案内されています。人材育成支援コースの45%は正規雇用労働者等の場合の率で、非正規雇用労働者は70%です。
賃金要件等を満たすと助成率が上がる仕組み
人材育成支援コースなどでは、訓練後に受講者の賃金を上げた企業に対して助成率や賃金助成額が加算されます。たとえば人材育成訓練の賃金助成は、中小企業で1人1時間あたり800円から1,000円に上がります。
- 賃金要件は、訓練修了後の賃金改定で、改定前後の賃金を比べて5%以上上昇していること
- 資格等手当要件は、就業規則等に定めた資格等手当を支払い、支払い前後の賃金が3%以上上昇していること
個人向けのリスキリング支援は教育訓練給付と経済産業省の事業
個人でリスキリングする場合は、受講費用の20〜80%が支給される教育訓練給付が代表的な制度で、転職を目指す在職者向けには経済産業省の事業もあります。いずれも、会社ではなく個人の学び直しやキャリア形成を支える制度です。
教育訓練給付の3つの種類
教育訓練給付は、厚生労働大臣が指定した講座を修了した場合などに、受講費用の一部が支給される制度です。
| 種類 | 基本の給付 | 追加給付 |
|---|---|---|
| 専門実践教育訓練 | 受講中6か月ごとに経費の50%(年間上限40万円) | 資格取得等に加え、修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用されるか、被保険者として雇用されたまま資格取得等をすると70%(年間上限56万円)、さらに修了後の賃金が受講開始前より5%以上上昇すると80%(年間上限64万円)。80%への給付は2024年10月1日以降の受講開始分に適用 |
| 特定一般教育訓練 | 修了後に経費の40%(上限20万円) | 資格取得等に加え、修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用されるか、被保険者として雇用されたまま資格取得等をすると50%(上限25万円)。2024年10月1日以降の受講開始分に適用 |
| 一般教育訓練 | 修了後に経費の20%(上限10万円) | なし |
受講開始日時点で雇用保険の加入期間が3年以上あることが原則で、初めて受給する場合は専門実践が2年以上、特定一般・一般が1年以上で足ります。専門実践と特定一般では、受講前に訓練前キャリアコンサルティングを受け、ハローワークで受給資格確認の手続きを済ませる必要があります。
教育訓練休暇給付金
2025年10月からは、雇用保険の一般被保険者が就業規則等に基づき連続30日以上の無給の教育訓練休暇を取る場合に、教育訓練休暇給付金が支給されるようになりました。休暇開始前に5年以上の加入期間があることなどが要件で、休暇の取得には事業主の承認や手続きが必要です。
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業は経済産業省の事業で、在職者が民間の専門家へのキャリア相談、リスキリング講座の受講、転職支援を一体で受けられます。補助は個人ではなく補助事業者に支払われ、受講修了で講座の受講費用(税別)の2分の1相当(上限40万円)が補助されます。
- 追加補助は、本事業で行われた職業紹介による転職、または転職支援を行う職業紹介事業者自身への就職を経て、転職先で1年間継続して就業したことが確認できる場合に、同じ受講費用(税別)の5分の1相当(上限16万円)
- 上記以外の経路で転職した場合は、追加補助の対象にならない
対象は、登録時と初回面談時に在職者で、雇用主の変更を伴う転職を目指す人です。社員の定着を目的とした社内研修には使えないため、企業の研修計画とは切り分けて考えます。
企業が人材開発支援助成金を申請する流れ
人材開発支援助成金は、訓練開始日の6か月前から1か月前までに計画届を出し、訓練後2か月以内に支給申請するのが基本の流れです。研修の日程が決まってから逆算して準備を始めると、計画届の期限に間に合わないことがあります。
- 職業能力開発推進者を選任し、事業内職業能力開発計画を作って社員に周知する
- 訓練開始日の6か月前から1か月前までに、職業訓練実施計画届と事業展開等実施計画などを管轄の労働局へ提出する
- 計画どおりに訓練を実施し、支給申請までに訓練経費を全額支払う
- 訓練終了日の翌日から2か月以内に支給申請書を労働局へ提出する
- 労働局の審査を経て、支給または不支給が決定される
計画届は窓口、郵送、雇用関係助成金ポータルからの電子申請で提出できます。電子申請にはGビズIDの取得が必要なため、早めに準備しておくと安心です。
計画届の提出期間の数え方
計画届の提出期間は、訓練開始日の6か月前の同日から1か月前の同日までです。厚生労働省のパンフレットには、次のような例が示されています。
| 訓練開始日 | 計画届の提出期間 |
|---|---|
| 7月1日 | 1月1日から6月1日まで |
| 7月15日 | 1月15日から6月15日まで |
| 3月31日 | 9月30日から2月28日(うるう年は2月29日)まで |
提出期限が土日祝日の場合は翌開庁日が期限になります。郵送の場合は消印ではなく労働局に届いた日が提出日になるため、余裕を持って発送してください。
申請前に押さえておきたい注意点
助成金を確実に受け取るには、計画届の期限、経費の全額負担、研修内容と職務の関連性という3点を申請前に確認しておくことが欠かせません。令和7年度以降は支給申請後に審査をまとめて行う仕組みになっており、計画届を出しただけで支給が約束されるわけではありません。
- 訓練期間中も対象社員に賃金を適正に支払う必要があり、eラーニングでも訓練は労働時間として扱われる
- 研修会社からの返金や協力金で実質負担を減らした場合は、経費助成の対象外になる
- AI研修とAIツールの導入をセットにしても、ツールの導入費用は研修経費として申請できない。ただし中小企業向けの設備投資加算では、要件を満たすシステム導入やライセンス契約なども対象になる可能性があるため、労働局に確認する
- 報酬を得て助成金の申請手続きを業として代行することは、原則として社会保険労務士の業務になる(弁護士等の法定の例外を除く)
- 2026年5月の改正で、受講料等の価格設定に関する疎明書の提出が必要になった
「受講料が実質無料になる」「助成金で利益が出る」といった勧誘には注意が必要です。厚生労働省も、こうした不適正な勧誘を受けた場合は労働局へ情報提供するよう呼びかけています。
自社に合うリスキリング支援を見極める3つの確認ポイント
自社に合う制度を見極めるには、受講を会社の業務命令とするか、研修内容が事業展開やDX化に当たるか、研修の形式と時間数はどうかの3点を順番に確認します。この3点が決まると、検討すべきコースがほぼ絞り込めます。
- 会社が費用を負担し業務命令で受講させるなら人材開発支援助成金、社員が自発的に受講するなら人への投資促進コースの自発的職業能力開発訓練や教育訓練給付を確認する
- 新規事業、DX化、GX化、人事・人材育成計画に基づく配置転換のいずれかに当たるなら、事業展開等リスキリング支援コースを優先して確認する
- OFF-JTで実訓練時間10時間以上(eラーニング・通信制は標準学習時間10時間以上または標準学習期間1か月以上)を確保できるか、eラーニングか対面・同時双方向型かを確認し、賃金助成や受講回数の制限に当てはめる
判断に迷う場合は、計画届を出す前に管轄の労働局へ相談できます。厚生労働省のパンフレットでも、詳しい内容は厚生労働省や都道府県労働局のホームページで確認するよう案内されています。
AI研修でリスキリング助成金を検討するときの進め方
生成AIなどのデジタル研修で助成金を検討する場合は、汎用的な使い方の講座ではなく、対象社員の具体的な業務に直結するカリキュラムを組むことが前提になります。2026年8月の改正で、この点がより厳しく確認されるようになりました。
- AI研修に絞った要件や申請時の注意点はAI研修に使える助成金の解説で整理しています
- ツールやシステムの導入費用に使える制度はAI導入に使える補助金の解説で整理しています
AtkidのAI研修・導入支援では、自社業務を題材にした演習を中心にカリキュラムを設計し、人材開発支援助成金など公的支援制度の活用可否や進め方も個別相談の中で整理しています。研修内容と助成金の両方を検討したい場合は、お問い合わせからご相談ください。
よくある質問
- リスキリングの補助金と助成金はどう違いますか
- 企業が社員に研修を受けさせる費用は、厚生労働省の人材開発支援助成金のような雇用関係の助成金が中心です。個人が自分で講座を受ける場合は教育訓練給付などの制度があり、申請者も手続きも異なります。
- 事業展開等リスキリング支援コースはいつまで使えますか
- 厚生労働省のパンフレットでは、令和4年度から令和8年度までの期間限定の助成金と案内されています。令和9年度以降の扱いは、厚生労働省の最新の案内で確認してください。
- 研修が始まってから申請しても助成されますか
- 人材開発支援助成金では、原則として訓練開始日の6か月前から1か月前までに職業訓練実施計画届を労働局へ提出する必要があります。研修日程が決まったら、早めに計画届の準備を始めてください。
- eラーニングのリスキリング研修も対象になりますか
- 対象になり得ますが、事業展開等リスキリング支援コースではeラーニング等の訓練は経費助成のみです。2026年8月3日以降に提出した計画届に基づくeラーニング訓練は、同じ労働者につき1年度1回までに制限されています(2026年8月2日以前の契約・申込みなどには経過措置があります)。
- 個人でリスキリングする場合に使える制度はありますか
- 雇用保険の加入期間などの要件を満たせば、厚生労働大臣が指定した講座を対象とする教育訓練給付を利用できます。転職を目指す在職者向けには、経済産業省のリスキリングを通じたキャリアアップ支援事業もあります。
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