生成AIガイドラインとは|国の指針の要点と社内ルールの作り方・必要な項目

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生成AIを業務で使う会社が増えるにつれ、「生成AIガイドライン」という言葉を目にする機会も増えました。この言葉には、国が事業者向けに公表している指針と、企業が社員向けに定める社内の利用ルールの2つの意味があります。

国の指針は社内ルールを作るときの土台になるため、両方を合わせて理解しておくと効率的です。ここでは2026年10月時点で公表されている主な国の指針の要点と、社内ガイドラインを作る手順、盛り込みたい項目を整理します。

中澤 寛

Atkid 代表

中澤 寛

Atkid株式会社の代表として、ホームページ制作・SEO対策・Web広告運用などのWebマーケティングを統括。2014年の創業以来、自社事業でも集客から成約まで仮説検証を重ね、現場で再現できる施策をクライアントへ提供しています。

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目次

生成AIガイドラインの2つの意味

生成AIガイドラインには、国や公的機関が公表する事業者向けの指針と、企業が自社の社員向けに定める利用ルールの2種類があります。前者は考え方や取り組みの方向性を示すもので、後者は自社で「何をしてよく、何をしてはいけないか」を具体的に決めるものです。

種類作成主体主な内容企業での使い方
国・公的機関の指針総務省、経済産業省、文化庁、個人情報保護委員会などAIを開発・提供・利用する事業者が取り組むべき事項、法令上の考え方、注意点社内ルールに盛り込む観点の確認、リスクの洗い出し
社内ガイドライン各企業利用できるツール、入力禁止情報、出力の確認、承認手続き、相談窓口社員が日々の業務で判断する基準

国の指針をそのまま社員に配っても、自社でどのツールを使ってよいのか、どの情報を入力してはいけないのかまでは分かりません。国の指針で観点を押さえ、社内ガイドラインで自社の業務に合わせた具体的なルールに落とし込む、という役割分担で考えると整理しやすくなります。

企業が押さえておきたい国の主な指針

企業が生成AIを業務で使う際にまず確認したいのは、総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」、文化庁の「AIと著作権」に関する資料、個人情報保護委員会の注意喚起の3つです。行政機関向けや自治体向けの資料も、社内ルールを作る際の参考になります。

資料名公表元公表時期主なテーマ
AI事業者ガイドライン(第1.2版)総務省・経済産業省2026年3月31日AIの開発・提供・利用に関わる事業者の取り組み全般
AIと著作権に関する考え方について文化審議会 著作権分科会 法制度小委員会2024年3月15日生成AIと著作権法の関係
AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス文化庁著作権課2024年7月31日立場別の著作権リスクの低減策
生成AIサービスの利用に関する注意喚起等個人情報保護委員会2023年6月2日生成AIへの個人情報の入力
行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン(2.0版)デジタル庁2026年6月に概要を公開政府機関における生成AIの推進・ガバナンス・調達
自治体におけるAI活用・導入ガイドブック 導入手順編(第4版)総務省2025年12月16日自治体のAI導入手順、生成AIの活用事例、利用ガイドラインのひな形

総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン」

AI事業者ガイドラインは、AIを開発・提供・利用する事業者に向けた統一的な指針です。経済産業省の公表ページでは、2026年3月31日付で第1.2版の本編、別添、チェックリスト、ワークシートのほか、活用の手引き(案)やチャットボットも公開されています。

文化庁「AIと著作権」に関する資料

文化庁のAIと著作権のページでは、文化審議会著作権分科会法制度小委員会による「AIと著作権に関する考え方について」と、立場ごとの取り組みをまとめた「チェックリスト&ガイダンス」が公開されています。チェックリスト&ガイダンスには、業務で生成AIを使う利用者向けのリスク低減策も整理されています。

個人情報保護委員会の注意喚起

個人情報保護委員会は2023年6月2日に生成AIサービスの利用に関する注意喚起等を公表しました。事業者が生成AIに個人情報を含む指示文(プロンプト)を入力する際の注意点がまとめられています。

行政機関・自治体向けの資料

デジタル庁の「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」は政府機関向けで、2026年6月に公開された概要資料では、2.0版の内容が2026年9月1日から施行されると示されています。総務省が2025年12月16日に公表した自治体におけるAI活用・導入ガイドブック 導入手順編(第4版)には、自治体が作る生成AIシステム利用ガイドラインのひな形が別添として付いています。

AI事業者ガイドラインの要点

AI事業者ガイドラインは、事業者を「AI開発者」「AI提供者」「AI利用者」の3つに分け、人間中心や安全性など10項目の共通の指針を示しています。生成AIのサービスを業務で使うだけの会社は、主に「AI利用者」の立場で読むことになります。

3つの主体と、利用企業の立場

ガイドラインでは、AIシステムを開発する事業者を「AI開発者」、AIを組み込んだサービスを提供する事業者を「AI提供者」、事業活動でAIシステムやサービスを利用する事業者を「AI利用者」と定義しています。同じ会社が使い方によって複数の立場を兼ねる場合もあるため、自社で生成AIを組み込んだサービスを顧客に提供する場合は、AI提供者としての事項も確認が必要です。

10項目の共通の指針

各主体が共通して取り組む事項として、次の10項目が挙げられています。社内ガイドラインの項目を考えるときのチェックリストとしても使えます。

  • 人間中心
  • 安全性
  • 公平性
  • プライバシー保護
  • セキュリティ確保
  • 透明性
  • アカウンタビリティ
  • 教育・リテラシー
  • 公正競争確保
  • イノベーション

第1.2版で加わった主な内容

総務省・経済産業省が示した令和7年度の更新内容の資料では、AIエージェントやフィジカルAIに関する定義やリスク、留意事項の追加、リスクの記載の見直し、活用の手引きやチャットボットの検討などが更新の柱として挙げられています。同資料では、AIエージェントを「特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動するAIシステム」とする定義案が示されました。

ガイドライン自体は法的な拘束力を持つものではなく、事業者の自主的な取り組みを後押しする位置づけです。一方で、個人情報保護法や著作権法などの法令は別に適用されるため、社内ルールでは法令上の注意点もあわせて押さえます。

個人情報と著作権で押さえたいポイント

社内ルールで特に具体化しておきたいのは、生成AIへの個人情報の入力と、生成物の著作権の扱いです。どちらも公的機関の資料で、事業者が確認すべき点が示されています。

個人情報を入力するときの注意点

個人情報保護委員会の注意喚起では、個人情報を含むプロンプトを入力する場合は、特定した利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確認することが求められています。本人の同意なく個人データを入力し、それが応答の出力以外の目的で扱われる場合は法の規定に違反する可能性があるため、提供事業者が入力データを機械学習に利用しないことなどを確認するよう示されています。

  • 個人情報を入力してよい業務と、してはいけない業務を分ける
  • 入力データを学習に利用しない設定や契約になっているかを確認する
  • 出力に不正確な個人情報が含まれる可能性を前提に、内容を確認する

著作権で注意したい点

文化庁のチェックリスト&ガイダンスでは、著作権侵害の要件として既存の著作物との「類似性」と「依拠性」の双方が必要であり、生成物を利用する前に既存の著作物と類似していないかを確認することが必要とされています。また、既存の著作物そのものや作品名、キャラクター名などをプロンプトに入力した場合は、依拠性が認められやすくなる点も示されています。

  • 生成AIによる生成自体は、私的使用や、許諾を得て利用することを前提にした社内の検討過程などであれば、権利制限規定の範囲内で許諾なく行える場合がある
  • 生成物をインターネットで配信するなどの利用は、権利制限規定の範囲外となる場合が多いとされている
  • そのため、生成物を社外に出す前に、既存の著作物と類似していないかを確認する手順が必要になる

同資料では、業務利用者の取り組みとして、生成AIの利用に関する内部的なルールの策定や、従業員への著作権教育、著作権侵害が起きた場合の対応をあらかじめ検討しておくことも挙げられています。社内ガイドラインを作る際の項目として、そのまま参考にできます。

社内の生成AIガイドラインを作る手順

社内ガイドラインは、利用目的と対象業務の整理、リスクの洗い出し、ルール案の作成、社内確認と周知、運用と見直しの5段階で作ると進めやすくなります。最初から完璧なものを目指さず、小さく始めて改訂していく前提で作ります。

  1. 生成AIを使いたい業務と、使う人の範囲を整理する
  2. 国の指針や利用するツールの規約を確認し、自社のリスクを洗い出す
  3. 利用できるツール、入力禁止情報、出力の確認方法などのルール案を作る
  4. 法務・情報システム・現場の担当者で内容を確認し、社内に周知する
  5. 運用しながら相談内容や事例を集め、定期的に見直す

現場の使い方から考える

ルールを禁止事項から考え始めると、現場で使いにくい内容になりがちです。どの業務でどう使いたいかを先に聞き取り、そのうえで守るべき点を決めると、実際の業務に沿ったガイドラインになります。

利用するツールの規約を確認する

同じ生成AIでも、契約するプランや設定によって入力データの扱いが異なる場合があります。社内で利用を認めるツールごとに、提供事業者の利用規約やデータの取り扱い方針を確認し、確認した内容を記録しておきます。

推進役と相談窓口を決める

ガイドラインを作る段階で、運用後に相談を受ける担当者と、改訂を判断する責任者を決めておきます。担当が決まっていないと、社員からの質問に答えられず、ルールが現場の実態から離れていきます。

  • ガイドラインの管理責任者(改訂の判断)
  • 日常の相談窓口(使い方や判断に迷ったときの問い合わせ先)
  • 情報システムや法務など、専門的な確認を依頼する部署

社内ガイドラインに盛り込みたい項目

社内ガイドラインには、目的と適用範囲、利用できるツール、入力してはいけない情報、出力の確認、著作権・権利への配慮、承認と相談の窓口、違反時や事故時の対応、見直しの方法を盛り込みます。項目ごとに、社員が判断に迷ったときに参照できる具体例を添えると使われやすくなります。

項目決めておく内容の例
目的と適用範囲ガイドラインの目的、対象となる社員・業務・ツール
利用できるツール会社が認めた生成AIサービスと、利用申請の方法
入力してはいけない情報個人情報、顧客から預かった情報、未公開の経営情報など
出力の確認事実確認の方法、社外に出す前の確認者
著作権・権利への配慮既存の著作物との類似の確認、作品名などの入力の扱い
表示・説明生成AIを使ったことを顧客や取引先に説明する場面
承認と相談の窓口判断に迷ったときの相談先、新しい使い方の申請先
事故時の対応誤入力や権利侵害が疑われるときの報告手順
教育と見直し研修の実施方法、ガイドラインの改訂時期と担当者

項目の抜け漏れを確認するには、AI事業者ガイドラインの共通の指針や、総務省のガイドブックに付いている利用ガイドラインのひな形と見比べる方法が有効です。自治体向けのひな形でも、項目の立て方は企業の社内ルールづくりの参考になります。

禁止事項だけでなく推奨する使い方も書く

禁止事項ばかりが並ぶガイドラインは、社員に「使わない方が安全」と受け取られやすくなります。文章の下書き、要約、アイデア出しなど、会社として積極的に使ってほしい業務も例示しておくと、ルールを守りながら活用が進みます。

ガイドラインを形だけで終わらせない運用のコツ

ガイドラインを機能させるには、研修で内容を伝え、相談窓口で判断を支え、集まった事例をもとに改訂する仕組みが必要です。文書を配布しただけでは、社員は迷ったときに使わない方を選びがちです。

  • ガイドラインの要点を1枚程度にまとめ、日常的に見られる場所に置く
  • 新しく利用を始める社員には、短時間でも研修の機会を設ける
  • 相談内容をためておき、よくある質問として追記する
  • うまくいった使い方を事例として共有し、ルールと一緒に更新する

実際にどの業務で生成AIが使われているかは、生成AIの活用事例の記事で業務別に整理しています。社員向けの研修の選び方はAI研修の選び方の記事も参考にしてください。

AtkidのAI導入支援では、活用テーマの整理から実務での検証、利用ガイドライン・承認フロー・セキュリティ方針などの運用ルール整備、社内定着までを伴走しています。社員の基礎理解から進めたい場合はAI研修・導入支援の研修と組み合わせられるため、社内ルールづくりの段階からお問い合わせください。

よくある質問

AI事業者ガイドラインに従わないと罰則がありますか
AI事業者ガイドラインは、事業者の自主的な取り組みを支援するための指針で、ガイドライン自体に罰則はありません。ただし個人情報保護法や著作権法など、関係する法令は別に適用されるため、法令の確認は欠かせません。
中小企業でも社内の生成AIガイドラインは必要ですか
社員が業務で生成AIを使うのであれば、規模にかかわらず最低限のルールは用意しておくと安心です。使ってよいツール、入力してはいけない情報、出力の確認方法の3点だけでも決めておくと、判断に迷う場面が減ります。
社内ガイドラインはどれくらいの頻度で見直すべきですか
決まった頻度はありませんが、利用するツールの追加や利用規約の変更、国の指針の改訂があったときには見直しが必要です。定期的な見直しの時期もあらかじめ決めておくと、内容が古くなるのを防げます。
社内ガイドラインのひな形はありますか
総務省が公表した自治体におけるAI活用・導入ガイドブックの導入手順編(第4版)では、自治体が作成する生成AIシステム利用ガイドラインのひな形が別添資料として示されています。自治体向けの資料ですが、項目の整理の参考になります。
生成AIで作った文章や画像は自由に使えますか
自由に使えるとは限りません。文化庁の資料では、生成物が既存の著作物と類似し、かつ依拠している場合は著作権侵害となり得るとされているため、公開や販売の前に既存の著作物と似ていないかを確認する手順を社内ルールに入れておきます。

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