DX人材育成の進め方5ステップ|育成プログラムの組み方と公的支援

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DXを進めようとしても、「社内に推進できる人がいない」「研修を受けさせたが現場が変わらない」という壁にぶつかる企業は少なくありません。DX人材育成は研修を受けさせるだけでは完結せず、どんな人材が必要かを決め、学びと実践を組み合わせて育てていく計画が欠かせません。

ここでは、経済産業省とIPAのデジタルスキル標準をもとにDX人材の定義を整理し、育成の進め方を5つのステップで紹介します。あわせて、育成プログラムの組み方と、2026年10月時点で確認できる公的支援もまとめます。

中澤 寛

Atkid 代表

中澤 寛

Atkid株式会社の代表として、ホームページ制作・SEO対策・Web広告運用などのWebマーケティングを統括。2014年の創業以来、自社事業でも集客から成約まで仮説検証を重ね、現場で再現できる施策をクライアントへ提供しています。

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目次

DX人材とは?デジタルスキル標準での定義

DX人材とは、デジタル技術とデータを活用して業務やビジネスを変革する力を持つ人材のことで、経済産業省とIPAのデジタルスキル標準では全社員に必要なリテラシーと、DXを推進する6つの人材類型に分けて整理されています。DX人材というと高度なエンジニアを思い浮かべがちですが、公的な基準では全てのビジネスパーソンが育成の対象に含まれています。

デジタルスキル標準は、次の2つで構成されています。

  • DXリテラシー標準(DSS-L):全てのビジネスパーソンが身につけるべき能力・スキルの標準。Why(DXが求められる背景)、What(データと技術)、How(データと技術の利活用)、マインド・スタンスの4項目で構成
  • DX推進スキル標準(DSS-P):DXを推進する人材の役割と、習得すべきスキルを定義した標準

DX推進スキル標準の6つの人材類型

2026年4月16日に公開されたデジタルスキル標準ver.2.0では、データマネジメント類型が新設され、DXを推進する人材は6つの類型で整理されています。自社に必要な人材像を考える際の共通言語として使えます。

人材類型主な役割中小企業での担い手の例
ビジネスアーキテクト変革の目的を定め、ビジネスや業務の仕組みを設計し、関係者をまとめて成果につなげる経営企画、DX推進担当、各部門のリーダー
デザイナー顧客やビジネスの視点から製品・サービスの方向性や見せ方、伝え方を設計する商品企画、マーケティング担当
データサイエンティストデータを分析し、AIを含む仕組みを設計・実装・運用してデータ活用を進めるデータ分析を担う担当者、外部の専門家
データマネジメントデータを安全かつ信頼できる状態で整備・運用し、組織のデータ活用を支える情報システム担当、各部門のデータ管理担当
ソフトウェアエンジニアデジタル製品・サービスを支えるシステムやソフトウェアを設計・実装・運用する社内エンジニア、開発会社との窓口担当
サイバーセキュリティ業務を支えるデジタル環境のセキュリティリスクの影響を抑える対策を行う情報システム担当、セキュリティ担当

中小企業では、1人が複数の類型を兼ねることも珍しくないため、6つすべてを社内でそろえる必要はなく、自社のDXのテーマに照らして、社内で育てる類型と外部の力を借りる類型を分けて考えるのが現実的です。各類型の詳しい定義はIPAのデジタルスキル標準のページで確認できます。

DX人材を社内で育成するメリット

DX人材を社内で育成する最大のメリットは、自社の業務や顧客を理解している社員が変革を担うことで、デジタル活用のテーマを現場の課題に結びつけやすくなる点です。外部から採用した人材や専門家だけに任せると、業務の実態とのずれが生じたり、取り組みが特定の人に依存したりしやすくなります。

  • 業務の流れや社内事情を知っているため、改善テーマを見つけやすい
  • 現場の社員と関係ができているため、変化への協力を得やすい
  • 育成の過程でノウハウが社内に残り、取り組みが属人化しにくい
  • 全社員のリテラシーが上がることで、推進人材の提案が通りやすくなる

一方で、高度な専門スキルを短期間で社内に育てるのは簡単ではありません。社内育成を軸にしつつ、専門性が高い領域は採用や外部パートナーと組み合わせる考え方が、多くの中小企業にとって無理のない進め方です。

DX人材育成の進め方5ステップ

DX人材育成は、現状把握、人材像の定義、育成計画の策定、実践の場づくり、評価と見直しの5つのステップで進めると、研修だけで終わらずに成果へつなげやすくなります。いきなり研修を探すのではなく、何のためにどんな人材が必要かを決めることから始めます。

STEP1. 現状を把握する

最初のステップでは、自社のDXの目的と、社員のデジタルスキルの現状を把握します。どの業務をどう変えたいのかという経営の方針と、いま社内に誰がいて何ができるのかを、あわせて整理します。

  • DXで解決したい経営課題や、変えたい業務・サービス
  • 社員ごとのデジタルツールやデータの扱いに関するスキル
  • すでに社内で進んでいるデジタル化の取り組みと、その担当者

STEP2. 必要な人材像を定義する

次に、DXの目的を達成するために必要な人材像を定義します。デジタルスキル標準の人材類型を参考にしながら、自社の言葉で「どの役割を、何人くらい、いつまでに」必要とするのかを決めます。

人材像を定義するときは、類型の名前だけでなく、その人に担ってほしい具体的な仕事まで書き出すと、育成の内容や評価の基準を決めやすくなります。

STEP3. 育成計画を立てる

人材像が決まったら、現状とのギャップを埋めるための育成計画を立てます。対象者、学ぶ内容、学ぶ方法、期間、担当者、予算を決め、年度単位の目標と途中の確認時期を置きます。

決める項目内容の例
対象者全社員、部門リーダー、推進担当、情報システム担当など、人材像ごとに選ぶ
学ぶ内容DXリテラシー、業務改善の進め方、データ活用、生成AIの業務活用、セキュリティなど
学ぶ方法社内研修、外部研修、eラーニング、社内プロジェクトでの実践、資格学習
期間と確認時期年度単位の目標を置き、四半期ごとなど定期的に進み具合を確認する
担当者と予算育成の責任者、受講者の上司の役割、研修費用と助成金の活用予定

助成金の活用を考えている場合は、この段階で制度の要件を確認しておきます。人材開発支援助成金のように、訓練開始前に計画届の提出が必要な制度もあるためです。

STEP4. 学びを実践する場をつくる

研修で学んだ内容は、実際の業務で使って初めて身につきます。小さな業務改善のテーマを決めて受講者に担当してもらうなど、学んだことを試せる場を意図的につくります。

実践の場では、上司や推進担当が相談に乗れる体制を用意し、うまくいった事例や失敗から得た学びを社内で共有すると、個人の経験が組織の知見として残ります。

STEP5. 評価して計画を見直す

最後に、育成の成果を評価し、計画を見直します。研修の受講状況や理解度だけでなく、業務の進め方やサービスにどんな変化が起きたかを評価の対象に含めます。

評価の結果をもとに、次の年度の人材像や育成内容を更新していくことで、事業の変化に合わせた育成を続けられます。

DX人材育成プログラムの組み方

DX人材育成プログラムは、全社員のリテラシー、DX推進人材、専門人材の3つの層に分け、それぞれに研修と実践を組み合わせて設計するのが基本です。層ごとに目的と学ぶ内容が違うため、1つの研修で全員をカバーしようとしないことがポイントです。

層対象目的主な学習方法
全社リテラシー全社員、経営層DXを自分事として理解し、自分の業務でデジタルを使えるeラーニング、全社研修、部門ごとの活用ワーク
DX推進人材推進担当、各部門のリーダー変革のテーマを企画し、関係者を巻き込んで進められる集合研修、外部講座、社内プロジェクトでの実践
専門人材エンジニア、データ担当、情報システム担当仕組みの構築やデータ整備、セキュリティ対策を担える専門研修、資格学習、実務を通じた習得

研修と実践を組み合わせる

どの層でも、研修などで知識を学ぶ時間と、業務の中で試す時間を組み合わせることが育成の効果を左右します。知識の習得だけを目的にしたプログラムは、受講後に現場の行動が変わらないまま終わりやすくなります。

  • 研修(知識のインプットと演習)
  • 実務での実践(小さな改善テーマへの取り組み)
  • 共有と振り返り(事例共有会や上司との面談)
  • 自己学習(オンライン講座や資格学習)

全社リテラシーから始めて推進人材を選ぶ

全社員向けのリテラシー研修を先に実施すると、社内に共通の言葉ができ、推進人材の取り組みに協力を得やすくなります。リテラシー研修の中で関心や適性が見えた社員を、推進人材の候補として次の育成段階へ進める方法も有効です。

研修の種類や選び方、対象者ごとの内容はDX研修の内容と選び方で詳しく紹介しています。

DX人材育成に使える公的支援

DX人材育成に使える主な公的支援には、経済産業省とIPAのデジタルスキル標準とマナビDX、経済産業省のマナビDX Quest、厚生労働省の人材開発支援助成金があります。費用を抑えながら育成を進めるために、それぞれの役割を知っておきましょう。

デジタル人材育成プラットフォーム「マナビDX」

マナビDXは、経済産業省とIPAが運営するデジタル人材育成プラットフォームです。デジタルスキル標準などへの対応を経済産業省とIPAが審査し、合格した講座が掲載されています。

  • 掲載講座は「デジタルリテラシー講座」と「デジタル実践講座」の2種類
  • 受講料無料の講座も掲載されている
  • 学習プランやAIチューターなど、学習を進めるための機能がある

全社員のリテラシー教育や、推進人材の自己学習の入口として活用できます。最新の講座はマナビDXの公式サイトで確認してください。

実践型の育成プログラム「マナビDX Quest」

マナビDX Questは、経済産業省によるデジタル推進人材の育成プログラムです。企業の実際の課題やデータをもとにした教材で学ぶ約3か月を目安とするプロジェクト型学習「ケーススタディ教育プログラム」(期間は実施プログラムにより異なる)と、地域の中小企業と協働して現場でDX推進プロジェクトを実践する「地域企業協働プログラム」があります。

経済産業省は2026年6月2日に、2026年度の受講生募集を発表しました。募集開始日や期間は実施事業者によって異なり、年度ごとにも変わるため、中小企業基盤整備機構のJ-Net21の案内などで最新情報を確認しましょう。

人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)

厚生労働省の人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースは、企業内のデジタル・DX化に関連する業務に必要な専門的な知識・技能を習得させる訓練を対象の一つとしています。令和8年8月3日版の支給要領では、中小企業の経費助成率が75%、賃金助成額が1人1時間あたり1,000円(大企業は60%、500円)です。

  • 職業訓練実施計画届を、訓練開始日の6か月前から1か月前までに提出する
  • 通学制や同時双方向型の通信訓練は、1コースあたりの実訓練時間数が10時間以上である
  • eラーニングや通信制による訓練は経費助成のみで、賃金助成は支給されない

このほかにも要件があり、制度は年度途中でも改正されます。申請前に厚生労働省の人材開発支援助成金のページと管轄の労働局で確認し、制度の全体像はリスキリングに使える助成金の解説も参考にしてください。

DX人材育成でつまずきやすいポイントと対策

DX人材育成でつまずきやすいのは、目的があいまいなまま研修を始める、学んだことを使う場がない、推進担当が孤立する、成果を測っていないという4つのケースです。いずれも、育成を始める前の設計と、研修後の仕組みづくりで防げます。

つまずきやすいケース起きやすいこと対策
目的があいまいなまま研修を始める受講しても何に使えばよいか分からない経営課題と人材像を先に決め、研修の目的を受講者に伝える
学んだことを使う場がない時間がたつと学んだ内容を忘れてしまう研修とセットで小さな改善テーマを割り当てる
推進担当が孤立する本来業務と兼務で手が回らず、取り組みが止まる経営層が役割と時間を明確にし、相談できる相手を用意する
成果を測っていない育成の効果が分からず、予算や協力を得にくくなる人材像ごとに評価の基準を決め、定期的に振り返る

外部の研修・伴走支援を活用するときのポイント

外部の研修や伴走支援を活用する場合は、自社の業務を題材にした演習があるか、研修後の定着まで支援を受けられるか、助成金の活用を前提にした設計を相談できるかの3点を確認すると、育成計画に組み込みやすくなります。社内に教えられる人がいない段階では、外部の力を借りて最初の推進役を育てる方法も選択肢になります。

AtkidのAI研修・導入支援では、生成AIの基礎理解から自社業務を題材にした演習、プロンプトの資産化、活用事例の共有や運用ルール整備までを一連の流れで支援しており、人材開発支援助成金など公的支援制度の活用可否や進め方も個別相談の中で整理しています。初学者でも取り組みやすい段階的な設計で、社内推進役の育成まで視野に入れた支援を行っているため、生成AIの活用を入口にDX人材育成を始めたい企業は検討してみてください。

よくある質問

DX人材とはどのような人材ですか
経済産業省とIPAのデジタルスキル標準では、全てのビジネスパーソンが身につけるDXリテラシーと、DXを推進する人材の役割・スキルを分けて定義しています。推進する人材は、ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、データマネジメント、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティの6つの人材類型に整理されています。
DX人材は採用と育成のどちらで確保すべきですか
自社の業務や顧客を理解している社員を育てる方法は、変革のテーマを現場に結びつけやすい点が強みです。社内で育てにくい高度な専門スキルは、採用や外部の専門家の活用と組み合わせて補うと現実的に進められます。
DX人材育成にはどれくらいの期間がかかりますか
全社員のリテラシー研修は短期間で実施できますが、推進人材や専門人材の育成は、研修と実務での実践を繰り返しながら段階的に進めることになります。育成計画では年度単位の目標を置き、四半期ごとなど定期的に進み具合を振り返る形にすると管理しやすくなります。
無料で使えるDX人材育成の支援はありますか
経済産業省とIPAが運営するデジタル人材育成プラットフォーム「マナビDX」には、受講料無料の講座も掲載されています。デジタルスキル標準の資料もIPAのWebサイトで公開されているため、人材像や育成計画を検討する際の基準として活用できます。
DX人材育成の成果はどのように評価すればよいですか
研修の受講率や理解度だけでなく、業務の進め方やサービスにどのような変化が起きたかを評価に含めることが有効です。育成計画の段階で、人材像ごとに求めるスキルと、実務で達成してほしい行動や成果をあわせて決めておくと評価しやすくなります。

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