私たちのマーケティングについて
2024.04.15
まず、マーケティングという言葉の粒度を明確にします。
マーケティングという単語について様々な解説がされていますが、それはマーケティングという言葉の粒度による差異によって発生しているもので、根本的には同じあるいは表現が異なるだけというケースがほとんどです。
本記事では認識の齟齬が発生しないよう、以下の図解にある「狭義のマーケティング」について取り上げてお伝えします。
それでは早速本題に入りましょう!
Table of Contents
マーケティングとは?
マーケティングを端的に表現すると「物が売れる仕組み」という言葉に集約されます。
物が売れる仕組みを因数分解していくと「認知」と「好意(プレファレンス)」という要素に分かれます。
実世界でマーケティングができている事例
身近な物で捉えやすいよう、マーケティングができている状態を私たちの日常生活で考えてみます。
とあるサラリーマンの1日を描写してみました。
朝、電車で職場に向かい、道中のスタバでコーヒーを買う。
お昼には松屋でランチを食べ、帰路のコンビニでプレモルを買い自宅で飲み1日を終える。
上記の描写で無意識な消費活動が発生していますが、実はこの消費活動された商品群こそがマーケティングができている商品なのです。
私たちの意思決定の8割は習慣と呼ばれる無意識の活動によって行われています。
その無意識の8割は、いつかの潜在意識に叩き込まれた経験によって自然発生しており、無意識に消費者に根付いているブランドへの認識こそがマーケティング活動の重要な要素といえます。
なので詰まるところ、多くの方が知っていて、自然と手に取ってもらえる商品を目指しましょう、というのがマーケティングの大きなゴールとなるのです。
それではより深掘りするために物が売れる仕組みの要素である「認知」と「好意」についてみていきましょう。
物が売れるための「認知」
VITASというマルチビタミンサプリをご存知でしょうか。
多くのボディビルダーがおすすめするマルチビタミンで、手軽に摂取できAmazonでも購入できる利便性も兼ね備えた商品です。
おそらくほとんどの人が知らないですし、ましてや食べたこともないと思います。このように当たり前ですが物が売れる最初のステップは「認知」です。
そして認知には「純粋想起(Aided Awareness)」と「助成想起(Unaided Awareness)」が存在します。表にまとめるとこんな感じ。
基準 | 純粋想起 (Unaided Awareness) |
助成想起 |
定義 | 消費者が特定のブランドを自発的に思い出す能力。特定のカテゴリーについて質問され、その中で特定のブランド名を言い当てる能力。 | 消費者が特定のブランドについて尋ねられたとき、それを認知しているかどうか。ブランド名が提示され、それを認識する能力。 |
調査の方法 | 消費者に特定のカテゴリー(例えば、ソーダ)について思い浮かぶブランドを尋ねる。 | 消費者に特定のブランド(例えば、コカコーラ)を認知しているかどうかを尋ねる。 |
調査の目的 | ブランドのトップオブマインドの認知度を測る。これはブランドが消費者の意識にどれだけ上位に位置しているかを示す。 | ブランドの全体的な認知度を測る。これは消費者がブランドを知っているかどうかを示す。 |
利点 | ブランドの相対的な強さや認知度を測定するのに役立つ。この情報はマーケティングストラテジーや広告キャンペーンの開発に非常に有用。 | ブランドが全体的にどれだけ認識されているかを把握するのに役立つ。広範な消費者群に対するブランドの知名度を判断することが可能。 |
欠点 | ブランドが消費者の意識の最上位にない場合、その認知度は低く見積もられる可能性がある。 | 助成された状況でブランドを認識できることは、そのブランドが消費者の選択に影響を与えるとは限らない。 |
[参照] chatGPT4
マーケティングで重要な認知は純粋想起であり、さらに特定のカテゴリーの想起した一覧(連想集合)の中で最初に想起するものをトップ・オブ・マインド(第一想起)と呼び、認知の中で最も重要な指標の1つです。
まとめると、マーケティングにおける認知とは特定のカテゴリーの中で最初に思い出してもらえるかが重要だということです。
次は「好意」について深掘りしていきます。
とその前に、好意の重要性を事前に理解してもらうために購買行動の原理原則を整理します。
購買行動は好意と比例する確率論である
例えば家で缶ビールが飲みたくなった時を想像してください。きっとあなたは頭の中で2、3のビールブランドを想像し、あらかじめ優先順位をつけた状態で缶ビールを買いに行くはずです。
この一連のプロセスにおいて重要なことが2つあります。
- 特定のカテゴリーで最初に想起されたか(認知)
- 優先順位が高いか(好意)
そして私たちは1つのブランドのみを選んでいるわけではなく、意思決定する際に2、3つのブランドを想起して、好意が高いものほど高確率で選択します。
わかりやすく年間100回購入する商品があった場合、好意度によって購入回数は分散します。
もちろん現実はここまで単純な話ではありません。ただ、人の購買行動は好意と比例する確率論によって選択される、ということだけは覚えておいてください。
上記の考えを詳しく知りたい方は「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」という本を読んでみてください。購買行動の原理、ひいては市場構造の考え方を、入社3年でUSJの入場者数を730万人台から1050万人にまで引き上げたP&G出身のマーケターである森岡毅氏から学ぶことができるのでオススメです。
話が脱線しましたが、詰まるところ購買行動の本質は好意です。
森岡氏の言葉を借りれば「消費者のプレファレンス(好意)によって決定される購買行動の仕組みがどのカテゴリーにおいても同じ」なのです。
物が売れるための「好意」
アメリカのマーケティングの第一人者であるレビット氏の言葉で最も有名な格言があります。
ドリルを買いに来た人が欲しいのは、ドリルではなく「穴」である。
(People don’t want to buy a quarter-inch drill, they want a quarter-inch hole.)
消費活動をする際に、不満や不便などの”不”を解消するために商品を購入します。
思い返してみると、売れているブランドは漏れなく顧客の不を解決しています。
- 吉野家:お小遣いが少ないサラリーマンの肉を食べたいという不満
そうです、つまり不によって発生する課題、すなわちジョブ(用事・仕事)の発見と解決のプロセスこそが好意において最も重要だということです。
最もわかりやすい例が人の移動手段の進化です。
仮に「もっと速い馬をうみだそう!」という発想の追求をしていたら現在の車は生まれていません。新幹線も飛行機も生まれていません。
車も新幹線も飛行機も顧客の移動というジョブをより最適な形で解決するためのソリューションとして進化してきました。
私たちは何かしらのジョブを片付けたくて何かを雇用(消費)するのです。
より快適に解決する手段があれば自然の摂理で選ばれるといった具合です。
まとめると、不を言語化し、ジョブの発見及び解決することで、好意を集め物が売れる仕組みを作れるということです。
ただあらかじめお伝えしておくと、ジョブの発見及び解決する一連のプロセスをやり切ることは至難の業です。だからマーケターという職業が存在し続ける所以なのです。
マーケテイングでリソースをさくべき3つの要素
物が売れる仕組みを体系的に理解できたら、次は実際に現場でどのようなプロセスを経て課題解決に取り組むかまとめていきます。
まず大切なことは現在地を正確に粒度を上げて把握することです。
まず売上を図解すると以下の通りとなります。
売上 = 人口 × 認知率 × 購入率 × 購入個数 × 購入頻度 × 購入単価
上記を定数と変数に分けると以下の通りとなります。
- 定数:人口、購入個数、購入頻度
- 変数:認知率、購入率、購入単価
【実践編】WHOではなく不が大事
購入単価とはプレファレンス
【実践編】WHATはPODを見極めろ
最も有名なマーケティングフレームワークの1つである3C分析の中で、最も重要な要素がPOD(Point of difference)です。
- POD(Points of Difference):差別点=強み
- POP(Points of Parity):同質点=非購入理由
- POF(Points of Failure):劣後点=競合の強み
PODを高めていく方法としては以下の方法が挙げられます。
- 利点をとことん極めて他社の追随を不可能に
- 醤油ラーメン専門店
- 既存の製品特徴・テクノロジーに独自性を加える
- USJの逆ジェットコースター
- 新たな利点と組み合わせて独自性を作り出す
- ヘルシア(緑茶 × 脂肪燃焼)
→ 大きな投資が必要となることが多く、またブランドのイメージを壊す可能性もある
そしてPODを作り出すと同時に、PODを証明するファクト(RTB)と、PODを知覚可能なレベルで表現することも同様に重要になります。
これは購入前の期待値(First Moment of Truth)が高すぎる故に、購入後の期待値(Second Moment of Truth)が低くてクレームになるケースがあるためです。
【実践編】HOWはPODを知覚してもらうコミュニケーション活動
不を見つけJobを片付ける強力なPODが見つかった上で、ようやく取り掛かるのが消費者の目に映るHOWです。
顧客の目に触れるのはHOWだけであり、HOWでこけると今まで積み上げてきたものが机上の空論でしかなくなってしまいます。なのでHOWは最後の力を振り絞りやり切る作業です。
ただ、HOWは難しいことはなく、強力なPODさえあればさほど難しくありません。
正しいコミュニケーションをするために以下の3つを抑えれば、大きく外れることはありません。
- 正しくブランドが想起される
- 独自性のおかげで印象に残る
- PODが伝わる
コミュニケーション活動において上記8つの情報が揃えて5Aモデルと呼ばれるカスタマージャーニーを作成して角度の高いHOWを選択します。
- Aware
- Appeal
- Ask
- Act
- Advocate